鉄製品の錆落とし。

錆びた鉄製品をサンポールに浸しておくと、赤錆がきれいに落ちる、という記事がけっこうあります。
ちょっとHTML記法的にどこまで表現できるかも含めて、化学式で表現してみます。

まず酸化鉄は酸化第一鉄(酸化鉄(Ⅱ))と酸化第二鉄(酸化鉄(Ⅲ))、それに四酸化三鉄(酸化鉄(Ⅱ,Ⅲ))などがあります。化学式はそれぞれ、FeO、Fe2O3、Fe3O4となります。
このうち、赤錆は酸化第二鉄、黒錆は四酸化三鉄が主成分です。錆びた鉄、という場合にはたいてい赤錆を指します。

産業的には赤錆はフロッピーディスクの磁性面に利用されたり、微粒子を装飾品やガラスレンズの研磨剤としても利用していたようです。現在でも研磨剤として使われていて、グラインダーなどで使用する赤棒は酸化鉄を使用しています。
余談ですが研磨棒は赤→白→青の順に粒度が上がり、白は酸化アルミニウム、青は酸化クロムが主成分になります(https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/surface_treatment_technology/st01/c1981.html - MiSUMi-VONA 技術情報から)。


閑話休題。


赤錆は酸化第二鉄 Fe2O3 が主成分なのでこれをターゲットとします。一方サンポールは塩酸 HClが主成分です。なので、

Fe2O3 + 6HCl → 2FeCl3 + 3H2O

となるかと思いきやさにあらず。

実は赤錆はその主成分は酸化第二鉄ですが、実際には水和物として存在しているらしく、FeOOH(オキシ水酸化鉄)をもとに考えないといけないようです。別の書き方としては、Fe2O3・H2O となります。そのため、反応式は以下のようになるようです。

2FeOOH + 6HCl → 2FeCl3 + 4H2O

ですがこのとき水中では塩化鉄() FeCl3 はイオンとして遊離しているため、Fe3+ + 3Cl- となっているようです。

赤錆が溶け出した状態では主にこの Fe3+ が水中にありますが、ここに炭酸ナトリウム Na2CO3 を投入します。
すると鉄とナトリウムのイオン化傾向の差によって、

2FeCl3 + 3Na2CO3 → 2Fe↓ + 6NaCl + 3CO2

となって、二酸化炭素の泡が出て、溶けていた鉄が沈殿し、水溶液は食塩水になる、はずです。たぶん。なるといいな。

実際には赤錆以外の鉄も塩酸中に溶け出しているでしょうし、酸化第三鉄なども含まれているでしょうから、必ずしもこの通りになるとは限りませんが、大筋としての理解はこれでいいのではないかな、と思います。

ただし実際に実験する場合、サンポールを使うと塩酸以外の成分も含まれているので、ちょっと舐めてみるというのはやめたほうがいいでしょう。

それにしても、高校のときにも思ったけれど、鉄イオンは2価と3価があり、さらに水和してみたりα、γ、δなどの相に化けてみたり、身近なのに分かりづらすぎ…。

そういえばセスキ炭酸ナトリウムが最近キッチンや洗濯用に出ていて結構な人気だけれど、これは炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを1:1で混合したもので、弱酸性ではあるけれどタンパク質や脂質を溶かすので衣類の汚れ落としなんかに重宝してるんですが、そろそろパナマ風帽子がひと夏過ぎてちょっとニオイがしてるので洗濯しようと思ってます。

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