レイヤと言うのはグラフィックエディタとは異なり、実際の基板製造のための「層」のことです。基板とはプリプレグと呼ばれるグラスファイバーとエポキシを混合したプラスチック層と、銅箔を利用した配線層、レジストと呼ばれる絶縁素材の層、シルクと呼ばれるマークや文字の層からなっていて、基本的にpcbnewなどの基板エディタはプリプレグ以外の層をそれぞれデザインしていきます。
よくある基板は1.6mm厚で、2層だと1.0mmや1.2mm、6層だと1.8mmというのもあります。ここでいう2層とか4層、6層は銅の配線層のことです。
[抜粋和訳はじまり]
5. レイヤー
5.1 イントロダクション
Pcbnewは50の異なるレイヤで作業できる:
- 配線のための1から32層までのカッパー(銅箔)レイヤー
- 用途固定の14のテクニカルレイヤー:
- 12のペアレイヤー(Front/Back): Adhesive()、Solder Paste()、Silk Screen()、Solder Mask()、Courtyard()、Fabrication()
- 2つの独立したレイヤー: Edge Cuts()、Margin()
- 好きなように利用できる4つの補助レイヤー: Comments()、E.C.O.1()、E.C.O.2()、Drawings()
(略)
5.3 レイヤーの解説
5.3.1 カッパーレイヤー
(略)
5.3.2 ペアレイヤー
12のテクニカルレイヤーがペアになっている:1つはフロント(前面/部品面)、1つはバック(背面/はんだ面)。これらは名前の後の"F"または"B"のプレフィクスで識別できる。これらのレイヤーのうちのフットプリントを構成する要素(パッド、描線、テキスト)は、フットプリントをひっくり返されたときには自動的に対となるレイヤーに反転移動される。
テクニカルレイヤーのペアーは次の通り:
- Adhesive (接着剤)(F.Adhes and B.Adhes)
These are used in the application of adhesive to stick SMD components to the circuit board, generally before wave soldering.
一般的にウェーブソルダリング(はんだ槽内でのスルーホール部品のはんだ付け)の前に、回路基板に面実装部品を突き刺して固定するための接着剤を指定するために利用される。(スルーホールには通常面実装部品は使用しないので意味不明。スルーホール部品でも面実装部品でも大きいものはボンドを使用してリフロー前に仮固定することがあるので、SMDという単語は余計。) - Solder Paste (はんだペースト)(F.Paste and B.Paste)
Used to produce a mask to allow solder paste to be placed on the pads of surface mount components, generally before reflow soldering. Usually only surface mount pads occupy these layers.
一般的にリフローソルダリング(リフローはんだ付け)の前に、面実装部品のパッドにソルダーペーストを塗布するためのマスクを生成するのに使用される。(ソルダーペーストの塗布は、0.1〜0.2mm厚程度のステンレス製メタルマスクを基板上に置いてスキージーでペーストを塗布するシルクスクリーン印刷に似た工程である) - Silk Screen (シルクスクリーン)(F.SilkS and B.SilkS)
They are the layers where the drawings of the components appear. That’s where you draw things like component polarity, first pin indicator, reference for mounting, …
部品の位置を示す描画を行うためのレイヤー。部品の極性や、1番ピンの位置、実装のためのリファレンスなどを描画する。(通常ではシルクと省略されることが多い。発音的には絹のシルクではなく、ク↑ラブ的な感じ) - Solder Mask (はんだマスク)(F.Mask and B.Mask)
These define the solder masks. All pads should appear on one of these layers (SMT) or both (for through hole) to prevent the varnish from covering the pads.
ソルダーマスクを定義する。すべてのパッドはFかBのどちらか(面実装)あるいは両方(スルーホール)のレイヤーになければならない。 - Courtyard (中庭)(F.CrtYd and B.CrtYd)
Used to show how much space a component physically takes on the PCB.
部品が基板上で物理的に専有するスペースを表示するために使用される。(JEITA ET-7501では「部品本体とランドパターとを組み合わせた境界の周囲に、電気的及び機械的な最小クリアランス領域(製造許容領域)を加えた長方形領域」となっている) - Fabrication (製作)(F.Fab and B.Fab)
Footprint assembly (?).
フットプリントの実装(?)
(略)
5.3.4 一般用途レイヤー
これらのレイヤーはどんな使い方をしてもよい。実装方法を指示するテキストやワイヤリング、組立図、実装やマシニング用ファイルの生成用途などなど。レイヤーの名前は以下の通り:
- Comments
- E.C.O.1
- E.C.O.2
- Drawings
…だそうなので、5.3.4の説明によればこれら4つのレイヤーを使って、寸法図や中心線、補助線などをいれ、最終的に外形図などを出力するときに印刷すべきもの(寸法図やキリなどの指示)と印刷しないもの(中心線、補助線)を別レイヤーにするのがよいと思われます。
ということを考えて、自分的利用分類を以下のようにしました。
- Comments コメント、高さ方向クリアランスの計算根拠とかいろいろ
- E.C.O.1 寸法線、寸法補助線、引出線
- E.C.O.2 基板製造及び実装指示におけるコメント
- Drawings 中心線、基準線、ピッチ線など
- Adhesive (接着剤)(F.Adhes and B.Adhes)
実装時、基板を移動させたりリフロー炉での加熱中に動いたり落ちたりしないよう、回路基板に部品を固定するための接着剤塗布の場所を指定するために使用する。
- Courtyard (中庭)(F.CrtYd and B.CrtYd)
部品が基板上で占有するスペースを描く層。他の部品との干渉を避けたり、実装のためのスペース(自動実装でも手実装でも必要な余裕)を確保したりするのに使用する。(JEITA ET-7501では「部品本体とランドパターとを組み合わせた境界の周囲に、電気的及び機械的な最小クリアランス領域(製造許容領域)を加えた長方形領域」となっている) - Fabrication (製作)(F.Fab and B.Fab)
部品の実際の外形を描く層。部品外形。
基板上には表示されず、基板エディタ上でのみ利用される。
ということは、FabとCrtYdではFabのほうが外側(フットプリントシンボルでは最外周)で、その内側にシルク、さらにCrtYd(部品外形)がくるということですね。