NordicのnRF5-SDKのメモ。

 Nordic の Bluetooth Low Energy の開発キット PCA10056nRF52840)を先日よりいじってるのですが、SDK がけっこういろいろあるようなので自分用に整理してみたメモ。

  • nRF Connect SDK - ちょっと乱暴な分類ですが、Zephyr RTOS ベースでのアプリケーション SDK。VSCode の 拡張機能から使用する nRF Connect for VS Code はこれをベースにしています。
  • nRF Connect for VS Code - VSCode 上で nRF デバイスの開発を行う拡張機能。toolchain の管理やデバッグのための機能を提供すします。DeviceTree Visual Editor も含まれていて、nRF デバイスのピンアサインやペリフェラルの設定もできる(らしいです。うちではちゃんと動かせてないので詳細不明。たぶん、STM32CubeMX みたいな感じ)。
  • nRF Connect for Desktop - クロスプラットフォームの開発サポートツールで、BLE の通信テストや Programmer、RSSI Viewer、Serial Terminal などを含んでいます。Programmer はフラッシュを全消去したりイメージを書き込んだりするときに使うので、インストールしておきたいツールです。
  • nRF5-SDK - nRF51、nRF52 シリーズの SDK です。現在は nRF Connect SDK に引き継がれていて、こちらはメンテナンスモードになっているようです。詳細は nRF Connect SDK and nRF5 SDK statement にありますが、nRF5 SDK がターゲットにしていた BLE、ANT  などに加えて、Thread、Zigbee、Bluetooth mesh などの技術への対応が必要になってきたこと、ハードウェアメーカからの設計時間の短縮やプロジェクト間でのリソースの再利用できるような要望が増えてきたこと、複数のプロトコルを組み合わせることが容易にできるようにすること、などに対応するのが nRF Connect SDK だそうです。statement ページの下の方に SDK の機能比較がありますので、参考になるかも。一方で、nRF5 SDK が廃止されるかというとそうではなくて、当面の間メンテナンスされますが、新チップや BLE5 よりあとの機能はサポートされないとのことです。実際 nRF53 や nRF91 シリーズは nRF5 SDK のサポート対象外です。
  • nrf と nrfx と nrfy - どれもペリフェラルドライバですが、それぞれにちょっと違いがああります。nRF5-SDK でダウンロードしたパッケージには nrfy は含まれていませんが、Github リポジトリには簡単な説明があります。nrf はオーソドックスな HAL ドライバで、nrfx は nrf でカバーしきれないハードウェアを直接叩く機能も含めたドライバ、nrfy(HALY) は HAL の拡張で、HALの代わりに使用できるような、基本的なハードウェアのユースケースを単一の関数にまとめたようなもので、キャッシュとバリア管理の機能を追加したもの、だそうです。ncs-3.0.0 で登場し、随時機能が追加されているようです。

VSCodeでbare metal(小ネタ)。

 Windows Terminal、いいですねぇ。タブ式ターミナルで使いやすいです。PowerShell も ArchLinux もコマンドプロンプトも MSYS2 の zsh も、全部これで使ってます。

一方で、UNIX 系(昔は AT&T のコピーライトの関係で U*NX なんて書いてましたね、最近見ないですが)のホストに接続するときは ssh やら telnet やら、あるいはシリアルコンソールやらを使います。こちらは WezTerm とか TeraTerm とか WindTerm とか Alacaritty とかいろいろありますが、そこでメインの作業をするというほどでもないので、RLogin を使用しています。COM ポートでのシリアルコンソールも使えるし、xterm 256色も使えるし。

ただ一方、VSCode で開発とかやるなら、VSCode 内でできればうれしい。特にデバッグ時のステップ実行のときに、F10 とか F11 とかのファンクションキーを押しながらシリアルコンソールを起動したターミナルを前面に出す、とかすごく面倒。VSCode の中から使える シリアルコンソールがないかな、と思ったら、Market Place にありました。

Serial Monitor。このツールに Serial Monitor というのがあり、これが使えるようです。

また、VSCode 内でペリフェラルレジスタやメモリダンプを確認できる Embedded development with C++ | Create and debug embedded applications というのもあります。

このページの GET STARTED にある、Download and install the Embedded tooling で、ちょっとわかりづらいけれど、Visual Studio Code のタブがあります。

ただ、なんかまだいろいろこなれてないのか、コンパイルはできるのに #include でファイル名に波線がついて「ファイルが見つかりません」的なことを言ってみたり、関数やマクロが未定義とか言われたり、エクスプローラビューでファイル名がグレーになってたりします。そのへんがちゃんと動けば完璧なんだけどなぁ。

VSCodeでbare metal(STM32L476RG編)。

 Ubuntu WSL2 で Segger Embedded Studio を動かすことを諦めて、VSCodeでやることにしました。STM32 VS Code Extension

あと、ピンアサインやペリフェラルの初期設定、HALドライバというかライブラリの自動ダウンロードと、初期化コードとmain()テンプレートの作成をしてくれる STM32CubeMX

それに ARM のクロスコンパイルをしてくれる arm-none-eabi-gcc か clang。ArchLinux では arm-none-eabi-gcc パッケージですが、Ubuntu だと gcc-arm-none-eabi パッケージになっているみたいです。

今気づいたけど、Windows上でクロスコンパイルをするなら mingw-w64 の GCC を使うことになるだろうから、やっぱり Ubuntu WSL2 上でやったほうがいいんだろうか。Linux 用の VSCode もあるわけだし。そういえば Visual Studio は 2017 あたりから Clang をサポートしているはずだけれど、こちらでクロスコンパイルはできるんだろうか。一応、WSL 用のバイナリは生成できるらしいけれど、アーキテクチャが違うとどうなんだろう。生粋の Clang なら、--target <triple> オプションで arm-v8-unknown-none-eabi などと指定すればよさそうだけれど。…と思ったら、ARM GCC Cross Compilation in Visual Studioなんていう記事がありました。これは GCC だけれど、たぶん Clang でもできるんだろうな。


と、それはさておき。

bare metal です、bare metal。ちなみにベアメタルは加工前のむき出しの金属みたいな意味。OS の皮を被っていませんので。

STmicro のサイトに VSCode 拡張機能の特設ページがあります。上でもちょっと触れましたが、STM32CubeMX と、binutils 的な STM32CubeCLT、それに STM32 VS Code Extension で構成すればいいようです。Extension のページの prerequisites には、CubeCLT は必須、CubeMX はあったほうがいいよ、的な感じ。ST-MCU-FINDER は MCU を比較選択するのに便利くらいな感じでしょうか。自分的には CubeMX は最高だと思います。ピンとペリフェラル、クロック設定をちょいちょいと選択して設定していくだけで、プロジェクトのスタートポイントが作成できるのは、bare metal 開発ではかなり楽ちんです。

まずは CubeCLT からインストールします。

ダウンロードして zip を展開し、インストーラを実行すると ST-Link のドライバをインストールするか聞いてくるので、ここはインストールしておきましょう。あとで J-Link 化するにしても。

インストールが終わると、ドライブルートに ST ディレクトリが作られ、その下に CMake やら Ninja やら GNU-tools-for-STM32 やらがインストールされています。Clang が使いたければ自分でビルドしたほうがいいのかしら…と、また脱線しちゃだめ。

次に STM32 VS Code Extension ですが、すでにいくつか拡張を組み込んでいてコンフリクトなど起こしても面倒なので、拡張機能を一旦まっさらにします。

%USERPROFILE%/.vscode/extensions を extetensions.bak などの名前に変更します。そして VSCode を起動したら、マーケットプレイスから STM32 Extension をインストールします。

インストールが終わったら、CubeMX でプロジェクトの雛形を生成します。

中央の New Project の列で、ACCESS TO BOARD SELECTOR をクリックし、評価ボード名の NUCLEO-L476RG を検索します。


選択したら右上の Start Project で設定を開始します。

ピンコンフィグは、USART_TX/RX と B1 、LD2  をデフォルトのままで、PH0-OSC_INと PH0-OSC_OUT を Reset State にします。

せっかく RTC 用に 32.768kHz の水晶振動子が搭載されているので、RTC ペリフェラルをアクティベートします。


次にクロックコンフィグで、左上のセレクタで LSE を選択します。


最後に Project Manager で、Toolchain / IDE のところを CMake にし、プロジェクト名とロケーションを設定してから右上の GENERATE CODE をクリックします。


そうしたら VSCode で、今作成したプロジェクトのディレクトリをインポートします。左側のチョウチョみたいなアイコンをクリックして、

Import CMake projectを選択します。


プロジェクトを開けました。

main.c は空っぽのままですが一応コード生成はできるので、いきなりデバッガを起動してみます。


GDBサーバが終了しちゃったので TERMINAL タブの出力を確認してください、というので見てみると、

Error in initializing ST-LINK device.
Reason: ST-LINK firmware upgrade required. Please upgrade the ST-LINK firmware using the upgrade tool.

などと出力されていました。早速 ST-Link のアップデートのページでファームウェアをダウンロードしてアップデートします。ダウンロードした zip ファイルを展開すると、Windows フォルダに ST-LinkUpgrade.exe ファイルがあるので、これを実行します。


Device Connect ボタンを押すとバージョン情報が表示されるので、Yesボタンをクリック。ファームウェアのアップグレードができました。

さてそれではデバッグしてみましょう。

F5 キーを押すとビルドしてデバッガが動き、main() の最初のステップで停止します。


あとはもう、通常のデバッガ動作です。Continue、Step Over、Step Into、Step Out、Restart、Stop。左ペインにはVariableとWatchウィンドウがあります。

おお、これで VS Code でデバッグできますね。

Ubuntu on WSL2にSegger Enbedded Studioをインストールする。その3(諦めモード)

 まだびみょ~に諦めてません。びみょ~だけど。

さて、世界中の人が気づいているかもしれませんが、WSL2 から Windows ホストの USB デバイスへのアクセスには制限があります。というか、一部を除いてできません。USB Audio やキーボードやマウスなどの USB HID デバイスは使えますが、それ以外の USB UART や 今回使おうとしているデバッガ/プログラマなどは使えません。Ubuntu から lsusb しても表示されません。

nRF52840 DK には同じ Nordic のチップ nRF5340 を使用した J-Link デバッガが載っていますので、ドライバをインストールする必要があります。…この時点で、WSL2 の上で全部やろうという計画は崩壊している気もしますが。

幸いというか、WSL の中の人がブログでやり方を示してくれています。Connecting USB devices to WSL。この記事は2021年11月のものなので、バージョンや機能など変わっているかもしれません。当時の usbipd-win のバージョンは 1.1.1 で、現在は 5.0.0 です。

大まかな流れは以下のような感じです。

  1. Windows 側に usbipd-win をインストールします。
  2. WSL の Linux 上にユーザスペースの USB/IP ツールと USB ハードウェア ID のデータベースをインストールします。
    sudo apt install linux-tools-5.4.0-77-generic hwdata
    sudo update-alternatives --install /usr/local/bin/usbip usbip /usr/lib/linux-tools/5.4.0-77-generic/usbip 20
  3. コマンドプロンプトを管理者モードで開き、usbipd list を実行します。上記のページでは usbipd wsl list となっていますが、wsl は不要(というか削除された?)ようです。
    # usbipd list
    Connected:
    BUSID VID:PID DEVICE STATE
    1-10 1b1c:0c21 USB 入力デバイス Not shared
    1-13 26ce:01a2 USB 入力デバイス Not shared
    1-14 8087:0033 インテル(R) ワイヤレス Bluetooth(R) Not shared
    6-2 001f:0b21 USB Audio, USB 入力デバイス Not shared
    8-1 0853:0104 USB 入力デバイス Not shared
    8-2 046d:c548 Logitech USB Input Device, USB 入力デバイス Not shared
    8-3 1a86:e010 USB 入力デバイス Not shared
    9-4 08bb:27c4 USB AUDIO DAC, USB 入力デバイス Not shared

    Persisted:
    GUID DEVICE


  4. usbipd で busid を指定して USB デバイスを WSL にアタッチします。
    usbipd detach --busid <busid>
  5. 作業が終わったら、同様にデタッチします。
    usbipd wsl detach --busid <busid>

ところで usbipd-win には、bind/unbind というコマンドや、server というコマンドがあるようです。bind/unbind は持続的な接続を行う場合に使用するようです。また、usbip は、bind したデバイスに USB/IP を使用してネットワーク越しのアクセスもできるようです。

sudo usbip attach --remote=<HOST> --busid=<BUSID>

上記の3で J-Link が表示されていないのは、まだドライバをインストールしてないから、だと思います。ドライバのインストールはどうしようか迷い中。というのもドライバをインストールしたくないから、WSL2でサンドボックス作ってそこでやりたい、というのがそもそもなので。でも結局インストールしちゃうんだろうなぁ…。

Windows側に J-Link ドライバをインストールしたら、そもそもWSL環境でやる意味も少なくなってくるので、この記事も単なる実験記録になりそうです。

それはさておき。
なぜアクティベートできないのかという件ですが、もう少し突っ込んでみます。あまり突っ込んで回避方法とかやっちゃうとメーカーさんに目をつけられるのも怖いので程々に。

Segger のサイトに、ライセンスタイプに関する記述がありました。

  • J-Link-locked license
    アクティベーションは J-Link に保管され、持ち運びできるUSBドングルのように使える。
  • PC-locked license
    アクティベーションは PC に保管され、固定される。
  • Multi-user license
    マルチユーザライセンスはロックされる、どのコンピュータでもアクティベートできる。

MACアドレスで怒られるということは、今回のライセンスは PC-locked タイプだと思うのですが、試してみるには J-Link ドライバをインストールして、どうなるか見てみる必要があります。うーん、にわたま。でも、すでに usbipd-win はインストールしちゃいましたから、やってしまいましょう。

と、その前に、昨日 STM32 の評価ボード Nucleo-L476RG を買ってきましたので、それを繋いでみます。

ドライバが入っていないため⚠がついてますが、表示されます。なぜ J-Link はでないのでしょうか。もうこうなったら仕方ないのでドライバをインストールしてみます。ダウンロードページから使用条件許諾してダウンロードします。

ちなみに Segger のダウンロードページには、ST-Link を J-Link にするファームウェアがあります。ここを見ると、今回購入した Nucleo-L476RG は対象になっているようですね。SEGGER RTT Viewer とか結構ありがたいので、書き換えちゃおうかしら。

さて J-Link Software and Documentation Pack をインストールしてみます。


Install legacy USB Driver for J-Link という項目がありますが、これは Segger のナレッジベースによれば、すでにサポートされなくなった古いプローブを使用する場合にはインストールするというもので、最近のプローブは WinUSB ドライバを使用するのでインストールする必要はないようです。


このなかの BULK interface が Nordic のボードを繋いだときに出る表示です。なぜかCOMポートがたくさんありますが。

ここからは SES へ、となっていくわけですが、STmicro も Nordic も VSCode を利用した開発環境の構築ができるようです。

実はここだけの話、SES も Keil μVision も IDE が使いづらいんですよね。どちらかというと、重たいけれど Eclipse ベースの STM32CubeIDE のほうがこなれてるというか。特に μVision5 はシンボルの一括リネームができないとか、ソースのインデントを好みにするとか、いろいろと不満があります。それなら VSCode でやっちゃうのもありかな、という感じ。

MACアドレスの件ですが、WSL2ネットワークを新機能でブリッジモードに変更する(IPv6も利用可)[ただし暫定]という記事を見つけました。Windows 11 Pro 以上であることが必要なようですが、これでブリッジすればいいのかもしれません。が、そろそろ VSCode でいいかな、と思い始めてしまったので、とりあえず一旦はここまでとします。

Linux 6.6キタワァ。

6.6.87キタワァ。 本日、wsl --update したら wsl.2.5.7.0が来てました。 やっと6.6になったね。